先日PENTAXジャンク5台セットで手に入れたPENTAX KXのファインダーがカメラ内部の遮光や保護のために使われているモルトのカスで酷いことになっていたのでトップカバーを外して清掃。
簡単に出来たので、その方法をご紹介します。
それでは早速行ってみましょう。
コンテンツ
PENTAX KXとはどんなカメラ?

その前にKXについて簡単に解説します。
そんなの必要ないって方はここから修理の章にジャンプして下さい。
M42マウントからKマウントへ
KXを含むアサヒペンタックス(ASHI PENTAX)Kシリーズとは、1975年、ペンタックスが初めて発売した、Kマウントのフィルム一眼レフカメラです。
それまでのペンタックスの一眼レフカメラはPENTAX SPに代表されるように、M42と呼ばれるスクリューマウントを採用していました。
このマウントはスクリューマウントの呼び名通りレンズの脱着をネジのように回して行う為、やや面倒で時間がかかります。
一方その当時各社で広く使われるようになった、ニコンのFマウントに代表されるバヨネット式マウントは、現代の一眼レフやミラーレスカメラのほとんどに使われているのと同じマウント方式で、レンズをはめて捻るだけで簡単に取り付けることができます。
そこでペンタックスは他社に遅れを取らないよう新たにバヨネット式のKマウントを開発し、そのマウントシステムを採用したカメラの第一弾として、K2、KX、KMの三兄弟を発売しました。
今回ご紹介しているKXは電子シャッターを搭載した上級機のK2に続く中級機の位置付けで、最高速1/1000秒の機械式シャッターを搭載したカメラです。
このKXの特徴をとてもざっくりと表すなら、KマウントになったPENTAX SPになります。
ペンタックスが長年作り続けた機械式カメラ、Sシリーズのメカニズムをブラッシュアップして搭載したこのKXはとにかく丈夫なカメラで、致命的な故障がとても少ない事でも知られています。
OLYMPUS OM-1に敗北しMシリーズへ
しかし同じ頃ライバルのオリンパスから発売されたOLYMPUS OM-1の発売によってもたらされた一眼レフカメラの小型化のムーブメントにより、SPとほとんど同じ大きさとOM-1と比べて大柄だったKシリーズは苦戦を強いられ、結果的に約1年の短期間で後継機のMシリーズに取って代わられる事になりました。
そんな話を聞くとこのKXはダメなカメラなんじゃないかと思うかもしれないけど決してそんな事はありません。現代の目から見るとこのKシリーズは後継のMシリーズより良い点がたくさんあるのです。
Mシリーズは大幅な小型化によって大ヒットしましたが、その小型化のためにやや無理をして設計したのか、発売から40年が過ぎた現代に残っている個体は色々な部分に故障が見受けられます。
故障の少ないKシリーズ
一方のKシリーズ、特にKXは設計に無理がないため故障が少なく、多少の不具合があっても簡単なメンテナンスで治ってしまう個体が多いです。
そして大きく重いと言われた大きさも、その前の世代のNikomat FTnやminolta SR-T101などと比べると一回り小さく軽いのでこの現代にフィルム一眼レフカメラを使おうなんて人にとっては全然苦にならない大きさだと思います(笑)
そうそう、Mシリーズを開発した方々の名誉のために書いておくと、その当時40年以上の耐久性なんて考慮して設計していなかったので多少の故障は仕方ないよ、と私は思います。
必要な道具類

今回行うファインダースクリーンの清掃はカメラメンテナンスの基礎なので特殊な工具は必要ありませんが、あれば便利なものも含めて必要な道具をご紹介します。
ブロアー
フィルムカメラのメンテナンスに興味を持つ様な方ならすでに持っているとは思いますが、もしもまだ持っていないならカメラやレンズのメンテナンスのあらゆる機会に使用するのでこの機会に揃えてしまいましょう。
精密ドライバー
これがなくては始まりません。百均のドライバーでも作業は出来ますが、先端が弱くてすぐに曲がってしまうので(特にマイナス)出来れば多少良いものを揃えましょう。その方が断然作業が捗ります。
ちなみに私は下の商品を使っていますが、よく使う00番のプラスドライバーだけはもっと良いのが欲しいです。
例えばこれとか。
この二つがあればこれから解説する作業を行う事ができますが、持っていると圧倒的に作業が捗る工具があるのでそれもご紹介しておきます。
スプリング式コンパス

上の写真のようなネジを外すのにあると便利です。ネジの締め付けが緩い場合は先の細いピンセットなどでも外せますが、固着している場合外すのに苦労します。
私が使っているのはジャパンホビーツールの製品で加工精度も良くとても使いやすいのですが、結構良いお値段なので下記のような安価な製品を揃えるのも良いかも知れません。
モルト
工具ではありませんが、古いカメラは遮光用のモルトが劣化しているので新しいものに張り替えましょう。今回の作業でも必要です。
PENTAX KXのファインダースクリーンを清掃する方法
画像は全てタップやクリックで拡大します。
トップカバーの取り外しについてはhobbyvarietyさまの【PENTAX KX 銀塩カメラ 中古 分解】を参考にしました。
トップカバーが外れたら、ファインダーのゴミの原因であるフレキ基板の上の劣化したモルトを無水アルコールに浸した綿棒などで綺麗に取り除きます。
丸をつけた3か所のネジを緩め(外す必要なし)フレキ基板の乗った遮光カバーをずらしたら、ペンタプリズムを手前側に引き出すように取り出します。
私の個体ではこの下側のファインダースクリーンの上にモルトのカスがたくさん乗っていたので、それをブロアーで吹き飛ばして綺麗にしました。また、スクリーンをアルコールなどで清掃してもっと綺麗にしたくなるところですが、よほど上手くやらないと逆にシミになって余計見づらくなるのでブロアーだけにしておきましょう。
取り出したペンタプリズムに巻かれたモルトも劣化しているので取り除きます。ただし、やり過ぎるとプリズムに蒸着された銀が剥がれてしまうので程々に。
同じところにモルトを巻き直し、汚れていたらプリズムを無水アルコールで清掃します。
プリズムを同じ場所に戻したらファインダー像を確認し、まだゴミが残っていたら無くなるまでファインダースクリーンを清掃します。そしてファインダー像が綺麗になったら三箇所のネジを元通り締めてプリズムを固定します。
トップカバーの裏側にもモルトが貼られているので、それを剥がして新しいモルトに貼り直したら、逆の手順でトップカバーを取り付けて終了です。
まとめ
ファインダーに多少ゴミがあっても写真は撮れますが、やっぱり綺麗なファインダーを覗くのは気持ちいいし写欲も高まるので、私は新しいカメラを手に入れたらなるべくファインダーは清掃するようにしています。
特にこのKXの様な機械式シャッターのカメラは電子式シャッターのカメラと違って内部の電気配線が少なくて作業性が高いので、初心者でも手を出しやすいと思います。
自分で手を入れるとカメラに対する思い入れも高まるし、安く手に入れたジャンクカメラを修理して使うこともできる様になるので、まずは簡単なファインダーの清掃からチャレンジしてみて下さい。
ただし、ジャンクカメラの増殖にはくれぐれもご注意を!(笑)
それではまた。
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