Canon 7&Industar-61 L/D 55mm f/2.8の白黒フィルム作例集

国産レンジファインダーカメラのCanon 7について先日の記事で詳しく解説しましたが、今回はそのCanon 7で写した作例写真をお送りしたいと思います。

使用したレンズは旧ソ連製のテッサー型レンズ、Industar-61 L/D 55mm f2.8。

フィルムはAGFA APX100と言う白黒フィルムを使用し、富士フイルムの現像液スーパープロドール(SPD)で自家現像後、FUJIFILM X-E4にMicro-NIKKOR-P Auto 55mm f3.5を装着してデジタルデュープしました。

Industar-61 L/D 55mm f2.8について

作例の前に撮影レンズIndustar-61 L/D 55mm f2.8についても簡単に触れておきましょう。

レンズ名Industar-61 L/D 55mm f2.8
レンズ構成3群4枚(テッサー型)
レンズマウントL39(ライカスクリュー)マウント
焦点距離55mm
絞りF/2.8 ~ F16
フィルター径40.5mm
最短撮影距離1m
レンズサイズ縦47mm × 横53mm
重さ約130g

先ほどこのレンズについて旧ソ連製と書きましたが実はこのレンズ、旧ソ連時代のウクライナはハリコフのFED社で生産されたFED-5と言うレンジファインダーカメラの標準装着レンズ(今で言うキットレンズ)として世に出ました。

それ以上は書きませんが……

Industar-61 L/D 55mm f/2.8は、酸化ランタンを含有したガラスを一部のレンズに用いた、3群4枚構成のテッサー型レンズです。

このガラスは従来のガラスに比べ屈折率が高くかつ低分散な硝材です。

光は通常直進しますが、ガラスや水などの透明な物体に斜めから侵入する際に屈折します。

レンズはその屈折を利用して光を一点に集めて結像させる訳ですが、白色光はさまざまな色(波長)の集合体でその波長ごとに屈折率が異なるため色ごとに曲がり方が違い、例えば赤は屈折率が低いため小さく曲がり、青はその反対なため大きく曲がります。

そう、屈折によって光が色ごとに分かれてしまうのです。

これは太陽光が空気中の水分によって屈折して虹が出来るのと全く同じで、この現象を光の分散と言うのですが、その分散現象によってレンズで光を撮像面の一点に結像させようとしても色がずれてしまう事があります。

それがいわゆる色収差なのですが、この様な収差を抑えるために研究者は色々なガラス素材を開発し、その中の一つがこのレンズに使われている酸化ランタンを含有したガラスなのです。

このガラスは従来のガラスよりも低分散、簡単に言えば色ごとの屈折率の違いが小さくなるので、その結果色収差を抑える事ができるのです。

そんな酸化ランタンを含有したガラスを一部のレンズに使ったこのIndustar-61 L/D 55mm f/2.8は、当時としては色収差の少ない高性能なレンズだったと言いたかったのですが、簡単にと言いつつめちゃくちゃ長くなってしまいました(汗)

そうそう、もしかしてあなたは色収差は白黒写真には関係ないと思ったかも知れないけれどそんな事はありません。色収差を起こすと被写体の縁に色ズレによる縁取りが出てしまい、結果シャープさが失われて、いわゆる線の太い描写になってしまうのです。

Canon 7&Industar-61 L/D 55mm f/2.8の白黒フィルムを使った作例

先ほども書いたように、AGFA APX100と言う白黒フィルムを使用し、富士フイルムの現像液スーパープロドール(SPD)で自家現像後、FUJIFILM X-E4にMicro-NIKKOR-P Auto 55mm f3.5を装着してデジタルデュープしました。

写真は全てタップやクリックで拡大します。

工事中

工事中

テッサー型レンズは鷹の目と呼ばれるようにシャープな描写が売りでしたが、現代の目で見ると解像感がメチャクチャ高い訳ではありません。しかし、コントラストが適度に高く自然で見やすい描写に感じられます。

工事中2

工事中2

このIndustar-61 L/D 55mm f/2.8と言うレンズはわずか130gのとても小さなレンズですが、白黒の撮影ではとても弱点の少ないレンズに感じますが、レンズを小型化した弊害なのか樽型の歪曲収差が単焦点レンズにしては大きい様に感じます。

置き去られた自転車

置き去られた自転車

絞りは多分F8で撮影したと思う。私は絞り込んで撮影したこの様な描写が好きなのですが、人によっては左側の抜けている部分をもう少しぼかした方がいいと感じるかも知れませんね。

植え込みと手すり

植え込みと手すり

最短撮影距離付近での描写です。1〜2段絞り込んでますが、近距離撮影のなので背景の手すりが綺麗にボケてくれています。

蔦の絡まる廃屋

蔦の絡まる廃屋

冬場の撮影なので葉が落ちていますが、夏は凄いことになりそう。

塀と自転車

塀と自転車

日陰の自転車の白と陽の当たった鉄パイプの白、自転車の黒と塀の灰色などがトーン豊かに描写されています。左上にゴーストが出ていますが(汗)

駐輪場

駐輪場

またまた自転車です(汗)
このような光の境界線はモノクロ撮影では一番美味しいポイントです。私はカラーでは色を白黒では光と影や物の形を探して撮影する様に心がけています。

日産キャラバン

日産キャラバン

ライトにピントを合わせて撮影しましたが、しっかりピントが来ています。Canon 7のレンジファインダーはとっても優秀で36枚撮影して大きくピントを外したカットは一枚もありませんでした。

カイト15歳

カイト15歳

我が家の愛犬、3月で15歳になったパピヨンのカイトくんです。最短撮影距離付近なのでピント合わせが難しく、このカットでは奥の目と背中あたりにピントの山が来て、肝心の手前の目はややピンボケですが、それによって逆に柔らかさが出たと感じてます。デジタルだとシャープに写るからバチピンだと凄いけど、ちょっとでもピンボケするとみるに堪えない写真になりますが、その点フィルム写真は寛容で良いですね。

塀からひょっこり

塀からひょっこり

このように直線の多い被写体だと歪曲収差の影響が大きく感じられますね。

仲良し

仲良し

この写真もよく見ると右側の雨樋が歪んでいます。私はこの程度なら気になりませんが、気になる人は画像処理で修正するのもありだと思います。

理髪店

理髪店

またまたまた自転車です(笑)
レンジファインダーカメラは一眼レフと違って実際のピントがファインダーで確認できないので良い意味でピントに神経質になりません。このカットはF8だと思いますが、被写体までの距離が数メートルならこの様にある程度絞り込んでおけば二重像で真ん中辺りにさっとピントを合わせるだけで周辺の殆どが被写界深度に入るため、サクサク手早くスナップ撮影する事ができます。

FUSO

FUSO

ネガフィルムのラチチュードの広さに救われた写真。適正露出よりかなりオーバーしていると思いますが、トラックの前面や手前側の路面や置かれた物たちの階調がギリギリ保たれてる。同じ露出でデジタルで撮ったら画面のかなりの部分が白飛びしていると思います。

ボケたブランコ

ボケたブランコ

最後はボケ味を見るために撮ったカット。玉ボケが六角形になっているので開放ではなく1段絞ってるはず。それでも被写体に寄って背景が離れていると大きくぼかす事ができます。ボケ質も思った以上に柔らかいですね。

まとめ

このCanon 7始めレンジファインダーカメラは、やはりスナップに最適なカメラだと撮影していて改めて感じていました。

一眼レフのファインダーだと覗いた瞬間ピントがずれているのはすぐに分かってもそれが前ピンなのか後ピンなのかはよほど慣れた人でないとすぐには分からないし、ピントのピークをキッチリ探るためにもどうしてもピントリングを何度も左右に回してしまいます。

でもレンジファインダーは二重像が左にずれていたら右に、右にずれていたら左にピントリングを回し、像が重なったらそこがピントのピークなので迷わず直ぐに撮影できる。

これがスナップに最適な理由だと思う。

まあAFカメラならそんな事は関係ないんだけどね(笑)

それではまた。

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